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「熱量が生まれる 製造業の組織変革とは」開催レポート【Management Success Hub】
「熱量が生まれる 製造業の組織変革とは」開催レポート【Management Success Hub】

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マネジメントサクセスプラットフォーム「mento」を提供する株式会社mento(本社:東京都港区、代表取締役:木村憲仁、以下mento)は、2026年6月24日(水)に「Management Success Hub 熱量が生まれる 製造業の組織変革とは」を開催いたしました。

その内容をハイライトとしてお届けします。

開催背景

製造業をはじめとする日本の大手企業では組織の「空気」をどう変えるのかという課題感を持っています。

本イベントでは、「製造業における組織の熱量をあげるには」をテーマに、NECやGEでの実務経験を持つ法政大学大学院・石山恒貴教授による日本型雇用の構造的課題と三菱電機モビリティ株式会社で変革プロジェクトを現場から牽引した井出朋さんによる組織変革の実践ストーリーをお届けしました。

イベント内容

【セッション1】石山恒貴教授
「製造業における組織の熱量をあげるには」

最初のセッションでは、法政大学大学院の石山恒貴教授が、日本の組織でエンゲージメントが低い根本的な構造と、その脱却のヒントを解説しました。

なぜ日本企業は熱量が低いのか? 構造的な原因

Gallup社の2026年最新レポートにおいて、従業員のエンゲージメントは世界平均20%であるのに対して、日本は8%と、相対的に熱量が低い状態が明らかにされています。石山教授はこの低さを「個人の問題でもなく、経営の問題でもなく、日本型雇用の設計そのものに原因がある」と指摘します。

キーワードは「無限定総合職・標準労働者・マッチョイズム」の三点セット。職務範囲も勤務地も無限定のまま評価され、私生活を相当程度犠牲にしてでも仕事に注力することが暗黙の前提となってきた日本型雇用の構造が、個人の主体性を長年にわたって奪ってきたと解説します。

打破のカギは「強みフォーカス」の文化への転換

この状況を打破し、組織の熱量を高める鍵は「強みフォーカス」の文化への転換です。その要点として、大きく分けて2つのポイントを紹介しました。

  • マネージャーの対話力が鍵
    • そのためにも、マネージャー自身が「強みやキャリアを大切にすることが幸せにつながる」と実感できる環境をつくる
    • また、1on1において業務の進捗確認や弱み改善(いわゆる詰め)を行うのではなく、成功体験を振り返り、個人の強みを引き出す対話を行う。その際、5回褒めて1回改善を伝える黄金律「5対1の法則」を実践する
  • 人事部門が対話によって組織文化づくりを担う
    • 従業員体験(EX)の視点を持ち、入社前から退職後までの一連のエンプロイージャーニーを把握する
    • 弱みを直すことよりも強みを洞察し、互いにそれを伸ばし合う文化を組織全体でつくる

「弱みは目に見えやすく、強みは洞察しないと見えてきません。だからこそ、強みを見つけることに時間をかける価値があります。そういう“強みを洞察し合う文化”をつくることこそが、これからの人事の仕事ではないでしょうか。」とセッションを締めくくりました。

【セッション2】井出朋さん(三菱電機モビリティ株式会社)
「自分たちから始める風土改革」

続くセッション2では、三菱電機モビリティ株式会社 人事部 変革企画課長 兼 変革推進室の井出朋さんが、ゼロから風土改革を起こした実践ストーリーを語りました。

なぜ変革に取り組んだのか?

井出さんは30代前半のころ、昇進試験の論文に技術的な自己アピールを書き並べた際に、部長から言われたエピソードを冒頭に紹介しました。「あなたは何のために三菱電機に入ったのか? 技術や知識を誰でも使えるように標準化をして、三菱電機のネットワークで広げて、社会全体のベースアップをすることがあなたの仕事ではないのか。技術や知識の独り占めはただの怠慢だ。」

この言葉が、以後の変革活動の芯に据えられています。

「100年に一度の大変革期」とも言われる自動車業界において、2021年に発生したインシデントは、お客様の信頼に応えるべく技術力に強い誇りを持つ技術者集団にとってショッキングな転換点に。「仲間たちが下を向いて仕事をしている姿が辛かった」という井出さんの言葉には、変革への切迫した動機が宿っていました。

心理的安全性を基盤に「勝つ組織」を目指して

当時の社内には、「言ったもん負け」「どうせ変わらない」「会社方針に共感できない」という言葉が広がっていたようです。

「このまま会社主導で風土改革を実施しても、会社の声に従業員は誰も耳を傾けるだろうか?と考えました。だから私たちは“従業員主体の風土改革”を選択しました。このスローガンは2022年から今まで変えていません。従業員一人ひとりが自分たちから始めるという意識を持ち続けてほしいという思いを込めています」

そして、従業員が主体的に動ける状態をつくるため、井出さんは「心理的安全性」に着目し、活動の基盤に据えます。

1人から始まった変革。100人へのヒアリングも

全社変革プロジェクトに手挙げで参加した井出さんは、当時正社員5,000名、関係会社を含めると約8,000〜9,000名規模だった姫路製作所において、たった1人での活動をスタートします。

管理職でも人事でもない状態で、井出さんが取り組んだことは「色んな人と話をすること」でした。設計・工作・営業・品証・人事、班長・課長・部長・所長……、最終的には100名以上のあらゆる職種・階層の方々を訪ね「あなたが困っていることは何ですか」と問い続けたそうです。

3人の有志勉強会からスタート、気づけば1,900名のフェスティバルへ

心理的安全性をテーマに、3人でスタートした有志の勉強会。予算も資料も手づくりでした。定時後に延べ約200名が参加。その後、公募で集まった同じ熱量を持てるメンバーと、井出さんを含めた10名のコアチームが発足します。「業務負荷20%を変革活動に充てる」ことを合意したことも、この活動が「ボランティア」に終わらなかった重要な一手でした。

その後、部長全27名との月1回30分の「逆1on1」、姫路全27部門への変革チーム発足、SECIスパイラルの実践、年1回「変革フェスティバル」(延べ約1,900名参加)など、活動はさらに骨太になっていきます。

ポジティブフィードバックを武器に「部長の孤独感」を解消

活動を通じて井出さんが発見した最大の洞察の一つが、「部長の孤独」です。「部下は本音を話してくれない。自分の提案は指示になってしまう。そのため失敗したら、という恐怖がある」、部長たちは変革を望んでいながら、孤独の中で身動きが取れなかったそうです。

井出さんはポジティブフィードバックを武器に部長たちと向き合いました。その部長の良い行動を周囲から集めてフィードバックする。承認されると行動が増え、部下が「部長が変わった」と感じ始め、部門全体の空気が変わっていく。このサイクルを27名の部長全員に対して実践しました。

「つまずくからこそ仲間が集まる」

工作部門への支援で起きたつまずき事例も語りました。「自分が引っ張ろうとした」失敗、「人事が取りまとめ役になった」失敗。その試行錯誤の末に見えてきた教訓が、「現場の自律性とそれぞれのプライドの尊重」、「つまずくたびに、共感者・協力者・自発的な行動者が増えること」です。

「つまずくことは悪いことではなく、つまずくからこそ仲間が集まってくる。私たちはつまずいて、つまずいて、つまずいて、今やっと自分たちにフィットした形が見えてきました」と井出さんは語ります。

活動の成果

活動の結果、「2022年から2025年で何か変わったと感じますか?」という社内アンケートでは約半数(49%)が「変わった」と回答。とりわけ「既存の業務の仕方を吟味し、変える風土ができてきた」という声が、心理的安全性の根付きを示すものとして印象的でした。

社外でも、ZENTech 心理的安全性AWARD(2023年ゴールドリング・2024年プラチナリング・2025年ゴールドリング)、ONE JAPAN CONFERENCE 2024「有志活動総選挙」でグランプリを受賞。

「たまにはつまずきながらも、自分が変わる、周りを変える、会社全体、そして社会を変えていく。これが私たち三菱電機モビリティの“自分たちから始める風土改革”です。変革を日常にするために、これからも自分たちから、変革を進めていきます」と締めくくりました。

【クロストーク】石山教授 × 井出さん

最後のセッションは、株式会社mento 事業戦略室 室長・庄司雄大をモデレーターに、石山教授と井出さんによるクロストークが行われました。

「井出さんがいたかどうか」で終わらせないためには?

石山教授は冒頭で「井出さんみたいな特別な人がいたから、という話で終わらせてはもったいない。今回の取り組み事例は再現性が高く、エッセンスをどう自社に活かすかという視点が大切」と整理しました。

大事なのは「方法論をそのままコピーするのではなく、つまずきながら各々の組織に合った形を探し続けること」と「まず聞く」という姿勢。部長の5回のドタキャンにも予定を入れ直しつづけた。そして部長の良いところを探してフィードバックしつづけたら、部長が心を開いた。この行動力こそが、「変わらない組織」の本音を引き出した鍵であり、「強みフォーカス」の取り組みだったのではないかと解説しました。

また、井出さんは「部長という役割の人格ではなく、部長個人の人格として何をしたいのか、という個人のWillに働きかけることで巻き込んでいった」と風土改革の同志集めのポイントを振り返りました。

カタカナ語では届かない。相手の「ホームと言葉」で伝えることが肝心

製造現場との壁をどう超えたかという問いに対し、井出さんは「私の上司が徹底的に“現場に行け”という人だった」と語りました。材料技術者として過去・現在・未来の3つの視点で現場を観察する習慣を身につけたことが、工作部門への無意識のリスペクトにつながっていたと振り返ります。

工作部門にキーマンとなる班長が生まれたのは、「その班長が信頼する部長が、休憩室に出向いてタウンホールミーティングをした」というエピソードがきっかけでした。その部長の変化の背景には「“アウェイ”に感じる場や馴染みのないカタカナ語では届かない。相手の“ホーム”と言葉で伝えてください」という井出さんのアドバイスがありました。

言葉の「翻訳」という技術

石山教授が付け加えたのが、井出さんの「言葉の翻訳力」です。「変わったことを『変わったね』と言う」「アウェイの場でカタカナ語で話しても届かない」。越境で得た知識を、ホームの言葉に翻訳して届ける。この力を、自分だけでなく周囲にも実践させている点が素晴らしいと言葉を贈りました。

井出さんはその秘訣として「会った人から嬉しかった言葉、響いた言葉を全てメモしている」と明かしました。言葉を集め続けることで、届く言葉の引き出しが増えていく。参加者からも大きな共感の声が上がりました。

クロストーク後は、各テーブルごとに参加者同士のディスカッションと、登壇者おふたりへの質疑応答タイム。軽食とともに懇親会も開かれ、盛会となりました。

参加者の声

  • 自社で抱えている課題に近いテーマについて、具体的な対応事例から多くの学びがありました。製造業ならではの「現場と本社の壁」をどう乗り越え、風土改革を進めていくかのヒントを得られました。
  • 組織変革に取り組む現場の熱量と、変革が進んでいくプロセスが非常に印象的でした。
  • 製造業の課題について、リアルな話を聞くことができました。改革に役立つ実例があり、自社でも取り入れたいと感じました。

登壇者

石山 恒貴 教授

法政大学大学院地域創造インスティテュート/大学院政策創造研究科/キャリアデザイン学部 教授

一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院修士課程修了、法政大学大学院博士後期課程修了、博士(政策学)。NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。日本労務学会常任理事、人材育成学会常任理事、Asia Pacific Business Review(Taylor & Francis) Regional Editor、一般社団法人越境イニシアチブ理事、日本女性学習財団理事、フリーランス協会アドバイザリーボード等。

主な著書:『人が集まる企業は何が違うのか』光文社、『キャリアブレイク』(共著)千倉書房、『ゆるい場をつくる人々』(共著)学芸出版社、『定年前と定年後の働き方』光文社、『カゴメの人事改革』(共著)中央経済社、『越境学習入門』(共著)日本能率協会マネジメントセンター、『日本企業のタレントマネジメント』中央経済社等主な受賞:日本の人事部「HRアワード2023」書籍部門最優秀賞(『カゴメの人事改革』)、日本の人事部「HRアワード2022」書籍部門最優秀賞(『越境学習入門』)、経営行動科学学会優秀研究賞(JAASアワード)(2020)『日本企業のタレントマネジメント』、人材育成学会論文賞(2018)等

井出 朋 さん

三菱電機モビリティ株式会社 人事部 変革企画課長 兼 変革推進室

2010年、三菱電機に新卒入社。自動車機器事業本部 材料技術課にて、有機材料の評価解析に従事。2021年10月より三菱電機の風土改革プロジェクトグループ、チーム創生の一員となる。2022年より風土改革を本務とし「自分たちから始める風土改革」をスローガンとして、対話と主体性を重視した風土改革を推進。ZENTech 心理的安全性アワード プラチナリング、ONE JAPAN 有志団体総選挙グランプリ受賞。

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