
「リーダーシップの科学」に学ぶ〜成果を出すためのマネージャーの振る舞い〜|ウェビナーレポート
登壇者:鈴木 竜太
神戸大学 大学院経営学研究科 経営学専攻 教授
1999年神戸大学経営学研究科博士後期課程終了(博士(経営学))。静岡県立大学経営情報学部専任講師を経て、2013年より現職。専門分野は経営組織論、組織行動論、経営管理論。著書に『組織と個人』(2002年:経営行動科学学会優秀研究賞)、『関わりあう職場のマネジメント』(2013年:日経・経済図書文化賞、組織学会高宮賞)、『経営組織論(はじめての経営学)』(2018年)、『組織行動 組織の中の人間行動を探る(共著)』(2019年)、『お仕事マンガの経営学(共著)』(2025年)、『リーダーシップの科学』(2025年)など。
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2026年6月12日、『人を動かし、成果を生み出す リーダーシップの科学』の著者、神戸大学大学院 経営学研究科 経営学専攻 教授の鈴木先生をお招きし、「そもそもリーダーシップとは何か?」「なぜ多くのリーダーは“振る舞い”から考えてしまうのか?」「成果につながるリーダーシップを設計するために、何を問い直すべきか?」といった問いを深掘りするウェビナーを開催しました。(司会:株式会社mento 横山真介)
本記事では、そのウェビナー内容をお届けします。
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鈴木教授:神戸大学の鈴木です。よろしくお願いいたします。
今日は「リーダーシップとは」というタイトルですが、リーダーシップにはたくさんの考え方があります。「リーダーシップ論」という観点からリーダーシップのあり方を考えて、皆さんのヒントになれば幸いです。
「リーダー」とは何か?
リーダーの捉え方は非常に多様で、1つのものではないことがわかっています。ザッカーロという研究者が4つのタイプに分類しています。
リーダーの4分類
(1)戦闘者(warrior)
1つ目は「戦闘者(warrior)」です。政治的なリーダーに多く見られるタイプで、競争相手に勝って領土を確立していくようなかたちで、戦いながらフォロワーを動機づけ導いていきます。ビジネスの世界でもそういったリーダーシップが発揮されることは多いかと思います。
(2)問題解決者(problem solver)
2つ目は「問題解決者(problem solver)」です。賢明な解決策を生み出すタイプで、困ったときに解決策を示してみんなを導いていきます。社会課題解決のリーダーや、ノーベル平和賞を受賞されるような方はこういった姿ではないかと思います。
(3)政治家(politician)
3つ目は「政治家(politician)」です。マキャベリの『君主論』が最も典型的に描く世界で、フォロワーの忠誠心やリーダーへの支持を獲得し、仲間をつけて人を動かしながら物事を成し遂げていきます。
(4)教師(teacher)
4つ目は「教師(teacher)」です。フォロワーに教えながら、コーチとなって勇気づけていくタイプです。老子の『道徳経』は問題解決者と両方の側面を持っていますが、宗教指導者のように、こう考えるべきだ、こう生きるべきだということを説きながら皆をリードしていくイメージです。
「リーダーシップ」の定義と本質
一方で、リーダーシップとは何かということも非常に多様です。ロストという研究者によると、587本の論文を調べた結果、221個の異なるリーダーシップの定義が示されていたそうです。
これは、時代によってかなり異なっています。

たとえば1920年代の大量生産時代には、フォロワーに対してリーダーが意志を印象づけることで、皆の尊敬を集め服従させていくことで特定の方向に誘導していく、それがリーダーシップだという考え方でした。
だんだんとリーダーの影響力によってフォロワーがビジョンに向かって動いていくという考え方になり、1980年代には「目的を持って行動するように他人を鼓舞すること」、1990年代には「共通の目的を反映した真の変革を意図したリーダーとフォロワーの間の影響力」というような表現が登場します。
このように、リーダーシップとは時代によって違ってきます。皆さんのなかにも、リーダーシップとはこういうものだという様々なイメージがあるのではないでしょうか。
とはいえ、リーダーシップとは何かが決まらないと議論が進みません。それぞれのリーダーシップ観が違うことは踏まえたうえで、ある程度定義を定めながら議論しないと、リーダーシップの育成や開発の拠り所がなくなってしまいます。
本質は「集団に目標達成を促すように影響を与えるプロセス」
そこで一旦、リーダーシップについての定義を示したいと思います。ユークルとガードナーは共著『Leadership in Organization(第9版)』のなかで、包括的な定義として次のように示しています。
本質的には、リーダーシップとは「集団に目標達成を促すように影響を与えるプロセス」です。
一般的にはリーダーシップはある種のパワーですので「プロセス」でなく「力」と捉えても構いませんが、リーダーからフォロワーへの一方的な力とも限らないため、「プロセス」と表現しています。
リーダーシップの要素
この定義から、リーダーシップ論がリーダーシップをどのように捉えてきたか、いくつかの要素が見えてきます。

リーダーとフォロワーの間で発生するもの
まず、リーダーシップはリーダーとフォロワーの間で発生するものだということです。
リーダーが影響力を与え、フォロワーがそれを受け取り、何かが動くのがリーダーシップが発生した状態です。
リーダーシップが発生することでリーダーとフォロワーが規定される
また、事前にリーダーとフォロワーの関係が決まるのではなく、リーダーシップが発生したことによって、「影響力を与えた人がリーダー」、「受け取った人がフォロワー」になるという考え方もあります。
シェアードリーダーシップというかたちで、ひとつの組織・職場において様々な人がリーダーシップを発揮することが望ましいとも言われますが、これはまさに「公式のリーダーが常にリーダーシップを発揮する側で、他の人はフォロワーとしてリーダーシップを受け取るだけ」というわけではないことを表しています。
たとえば、子供の頃に「今日何して遊ぶ」と話し合っているときに「野球しない?」と提案した子がその瞬間リーダーであり、「じゃあやろうか」とついてきた子がフォロワーになる。そういったところにもリーダーシップの本質があります。
リーダーシップはリーダーとフォロワーの間の共有された目標が必要
リーダーとフォロワーの間で、みんなで目標を達成していくんだ、実現していくんだと共有することも大切です。共有されていない目標で人々を動かすことは「リーダーシップ」とは言わず、それは、有無を言わさず従わせるある種の「権力」です。
リーダーシップ論が考えないこと

誤解が生じないよう、リーダーシップ論が考えないことも明確にしておきます。人事部の方が「優れたリーダーをどんどん社内から輩出したい」「次世代リーダーをどう育成するか」と考えることがありますが、これはリーダーシップを開発することとイコールではありません。
優れたリーダーは、目標に向かって人を動かせるという側面もありますが、その目標自体が非常に優れていること、つまり優れた戦略や目標を構想できる能力が必要です。歴史的な例で言えば、新しい時代を切り拓くリーダーは「次の時代はこうあるべきだ」という構想を持ち、それに向かって多くの人を導いていきます。明治維新で言えば、開国という構想を研究者や思想家が提示しましたが、彼らがリーダーだったわけではありません。その構想を実現するために多くの人を巻き込んで活動したのが西郷隆盛や大久保利通で、こちらがリーダーに該当します。
優れた戦略・目標という要素と、優れたリーダーシップでフォロワーを動かせるという要素、この2つが備わって優れたリーダーが生まれます。そのうち「人々をうまく動かすことができるか」がリーダーシップ論の範疇になります。
「優れた目標をどう定めるか」については、全社戦略であれば経営戦略論、マーケティングであればマーケティング戦略論といった分野が扱いますので、リーダーシップ論では扱いません。リーダーを育成するにはこの2つが大事ですが、企業によってはどちらかに偏って注力するケースもあります。やはりこの2つが備わらないと、優れたリーダーはなかなか生まれません。
リーダーシップはどこにある?
改めてリーダーシップの基本的な考え方を示すと、リーダーの行動や振る舞いがフォロワーを何らかのかたちで行動させ、それが業績・成果に繋がる、という構図になります。

ただし、リーダーがある行動をすれば必ず特定のフォロワーの行動をもたらすというわけではなく、その間でリーダーシップの強さが作動します。たとえば、学校のクラスでいつものまとめ役が提案すれば「じゃあ、やろうか」となるかもしれないし、今日来たばかりの転校生が同じ提案をしても誰も乗らないかもしれない。同じ提案でも関係性によって結果が変わるわけです。
リーダーシップがどこにあるかについては、大体4つの考え方があります。

①リーダーにある
①は「リーダーシップはリーダーにある」という考え方です。
能力や行動、特性といったものがリーダーシップの発生に大きく影響するため、リーダーシップはリーダーにあると考えます。そのような特性や能力を身につけること、そういった振る舞いをしていくことで人々を動かせるということです。
リーダーシップ論の大半はこの考え方を占めています。
③フォロワーにある
②は後述するため、③を先に説明すると、「リーダーシップはフォロワーにある」という考え方です。
リーダーシップを受容するかどうかはフォロワー側の問題です。いくらリーダーが振る舞っても「あいつはリーダーとして認めない」となれば影響力は生まれません。また、能力の高いフォロワーは非常に自律的で、リーダーがぽろっと言うだけで全部受け止めて行動できる。そういうフォロワーがいるとリーダーシップが発生しやすくなります。
あるいはリーダーシップの受け取り方のズレというパターンもあります。フォロワーが「リーダーにどんどん引っ張ってほしい」と思っているのに、リーダーが「みんなをケアして動きやすくする」スタイルで振る舞うと、一生懸命やっているのに噛み合わず、リーダーシップが発生しないということが起きます。
④リーダーとフォロワーの間にある
④は「リーダーシップはリーダーとフォロワーの間にある」という考え方です。
リーダーとフォロワーの間の関係が深い信頼で結ばれていれば、リーダーが何をしようがみんなついてきてくれる、逆に言えばどんな行動をするかはあまり関係ないという考え方でもあります。大胆な考え方ではありますが、実際の調査では、リーダー・メンバー交換関係(LMX;Leader-Member Exchange)が高いところでは業績が高く、フォロワーの行動が活発であることが確認されています。
②リーダーの置かれた状況、文化、国柄、歴史、環境
②が、「リーダーの置かれた状況・文化・国柄・歴史といった環境的要因」です。
これには2つの含意があります。1つは、状況によって効果的な行動が異なるということです。文化によって好まれないリーダーの行動もありますし、同じ行動でも受け入れられやすさが違います。日本は比較的、年長者や父性的な人物を受け入れる傾向があり、支持的・牽引型のリーダーが受け入れられやすい面がありますが、それも大分変わりつつあります。
2つ目は、置かれた状況によってリーダーシップの効果が大きく変わるということです。チームや国が危機的な状況にあるとき、人はリーダーという存在を強く求め、そこでは“強くないリーダー”でも大きな引っ張る力が生まれることがあります。
リーダーの育成とリーダーシップ開発
これらの考えはリーダーシップの開発について、もう少し多様に考える余地を与えてくれます。

リーダーの育成については、リーダー側のリーダーシップ発揮に関わる能力・特性・行動、たとえば対話力・交渉力・人間力といったものを養成していくことが1つあります。また先述したように、リーダーの育成にはビジョンや戦略の構築能力、先見性、視座の高さなども含まれます。経験による育成はこの両方を包含しうるわけですが、経験だけがそういったものをもたらすわけではないこともわかります。
また、リーダーシップの開発という観点では、リーダー側の能力を高めてリーダーシップを強くするというアプローチだけでなく、フォロワーを育成することでリーダーシップを作ることもできます。フォロワー自体の仕事能力を高めたり、リーダーシップを受容する力を高めることで、リーダーシップを組織内でうまく発揮させることができます。また、リーダーとフォロワーの間の関係性をうまくサポートすることで、リーダーシップが働きやすくすることもできます。
マネージャーとしてのリーダーシップ発揮
最後に、マネージャーとしてどのようにリーダーシップを発揮したらいいか、という話をします。先ほど、「リーダーの働きかけ→フォロワーの行動→成果」という流れを示しましたが、ここで考えると「自分は何をしたらいいか?」という「働きかけ」から考えてしまいがちです。しかし私はこれが間違いだと思っており、本来は「成果」から考える必要があります。

自分がリーダーとしてどのような成果を求めるかがわからないと、フォロワーにどんな風に動いてほしいかも決まりません。求める成果が決まってはじめて、部下が動くために自分は何をすべきか、どう働きかけたらみんな動いてくれるのかという考えに至ります。
なので、
- 「①求める成果と必要な行動を考える」
- 「②フォロワーにどう行動してもらうかの働きかけ方を思考する」
- 「③働きかけがフォロワーにどう反応され、何が起こるかを想像する」
という順番になります。
声のトーン、タイミングといった細部まで含めると、働きかけ方は無数にあり、それによって行動が変わってきます。そして自分がこう言ったらフォロワーはどう反応するだろうかということを論理的にも考えますが、想像的なものでもあります。Aさんは言い方によってへそを曲げてしまうかもしれない、Bさんは同じ言い方でも奮起してくれるかもしれない。Cさんはまだ仕事を覚えていないので、ある程度丁寧に教えたほうが良いかもしれない、といったように。
これを繰り返しながら成果を調整していきます。一発でうまくいくにこしたことはありませんが、なかなかそうもいかないので、様々な働きかけを複合して考えていくことになります。方法論をしっかり勉強しつつも、思い込みではなく確度の高い想像力で振る舞っていく、それが基本的なリーダーシップの思考法だと私は考えています。
私からの講演は以上となります。
ディスカッションパート
リーダーが知的な想像者であるためには?
横山:鈴木先生、ありがとうございました。私もいち管理職として非常に勉強になるお話でした。ここからお話しいただいた内容を踏まえてディスカッションに移りたいと思います。
最後のリーダーの思考法のところで出てきた「想像力」という言葉が非常に印象的で、著書でも「知的な想像者」というワードで触れられています。リーダーが知的な想像者であり続けるために必要なことは何でしょうか?
鈴木教授:ひとつは、思い込みや偏見で想像せず「論理的に考える」ということです。
経験はとても大事ですが、それ自体はひとつの事例にすぎません。一つの経験に基づいて「男性はみんなこういう傾向だ、女性はみんなこういう傾向だ」「若い人はこう接すればいい」といった固定的な思い込みができてしまうと、逆に想像力が働かなくなります。
思い込みを防ぐには「疑う」ことも大切です。「自分の今のやり方で本当にうまく行くのだろうか」というある種の悲観的な問いを持つ思考パターンは、思い込みを是正・抑制する手がかりになります。
想像力を高めるとは、「人間を理解する力」とも言えます。「人間」は様々なことから学ぶことができます。仕事の経験だけでなく日頃の人間関係もそうですし、あるいは本や小説、映画、アニメ、漫画など、様々な物語から多様な人柄を学ぶことができます。
リーダーとフォロワーの関係性を高めるために必要な仕組みは?
横山:リーダーとフォロワーの関係性についてお話しできればと思います。先ほどの「リーダーシップはどこにあるか」について、「リーダー・メンバー交換関係」「LMX理論」というキーワードが出てきました。これらについて、もう少し詳しく教えていただいてもよいですか。
鈴木教授:組織においてリーダーシップを強化していくための取り組みとしては、まずリーダー自身への働きかけとして、いい関係を結びやすくするための能力や対話力、傾聴力といったものを技術も含めて教育していくことが考えられます。あるいは「1on1」のような関係構築に活かせる手法や環境を用意することで、関係性を高めることを支援することもできます。
また、講演で話したようにフォロワー側への働きかけもできますし、「いい相性を作ってあげる」こともあります。ウマが合う組み合わせを意識した配置を考えるということですね。
たとえば中学校や小学校では、新人教員は比較的穏やかなクラスを受け持つことでトレーニングを積み、効力感をつけていくというアプローチがあります。これと同様に、業績がある程度良好な部署や環境が穏やかな部署に初任のマネージャーを当てることで、リーダーとしての実績がまだ少なくても関係性を高めやすくなります。
リーダーになりたい人を増やしていくには?
横山:最後の質問です。鈴木先生の著書を拝読すると、「リーダーってすごく楽しいよ」というメッセージが随所に現れると感じました。それは「知的な想像者であれ」というワードにも繋がるのだと思いました。
一方で世の中全体としては管理職になりたい人、リーダーになりたい人が少しずつ減っている流れがあります。そういった時代の変化をふまえ、リーダーになりたいと思える人を組織として増やしていくうえでの大切なポイントは何でしょうか?
鈴木教授:時代の流れもあって難しいことではありますが、リーダーになりたくないと思う要因のひとつとして、失敗が許容されないという状況があります。
新入社員が初めての仕事で戸惑っているときに「思い切ってやってみて」「自分なりに考えてやってみたらいいよ」と声をかけると思います。それと同じでリーダーになることも「初めての仕事」です。それに対して過度にプレッシャーをかけるのではなく、一定程度、失敗を許容する必要があると思います。その中で、自分で工夫するような試行錯誤のなかで経験を積んでいくのは仕事の楽しさのひとつであり、管理職も仕事と考えれば試行錯誤してうまくいくというプロセスをもっと重視しても良いと思います。
また、役職として公式のリーダーでなくても、若いうちからリーダーに準ずる経験を少しずつ経験していくことで、人や組織を牽引して物事を成し遂げることの面白さを感じてもらう仕掛けをしていくことも大切だと思います。
横山:なるほど、リーダーとして働きかけの試行錯誤をしながらフォロワーがどう反応するかを観察し、その経験を振り返ってリーダー自身が内省していくプロセスが組織のなかにあると、先ほどの「面白さ」に繋がっていきそうですね。
そろそろお時間がやってまいりました。鈴木先生、本日は充実したご講演をいただきありがとうございました
鈴木教授:皆さん、ご清聴ありがとうございました。

