
『アオアシに学ぶ「答えを教えない」教え方』著者が語る 「自律型人材」を育成する技術|ウェビナーレポート
登壇者:仲山 進也
仲山考材株式会社 代表取締役 / 楽天グループ株式会社 楽天大学学長
創業期(社員20 名)の楽天に入社。楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立、人にフォーカスした商売・組織育成のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。
楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業自由・勤怠自由)となり、仲山考材を設立、考える材料(考材)をファシリテーションつきで提供。
数万社の中小・ベンチャー企業を見続け支援しながら、自律自走型の組織文化・チームづくり、人が育ちやすい環境づくり、仕事を遊ぶような働き方を探究している。
「子どもが憧れる、夢中で仕事する大人」を増やすことがミッション。「仕事を遊ぼう」がモットー。
INDEX
2026年3月24日、仲山考材株式会社 代表取締役、楽天グループ株式会社 楽天大学学長の仲山進也さんをお招きし、『アオアシに学ぶ「答えを教えない」教え方』著者が語る 「自律型人材」を育成する技術というテーマでウェビナーを開催しました。(司会:株式会社mento 藤田隼)
本記事では、そのウェビナー内容をお届けします。
—
仲山さん:最近「VUCA」とか「正解のないカオスな時代」と言われ、そんな時代にあって「自分で考えて動ける人材が重要」というフレーズを聞く機会が増えてきているのではないでしょうか。でも、よく聞いてみると「自分で考えろ」とだけしか言われていなくて。具体的に「自分で考えて動くって、何をどうすることなのか」というのをちゃんと説明してから「自分で考えてね」と言ってくれる人って、あんまりいないなと思っています。
そこで、僕なりに「自分で考えて動く」とは何かということを言語化して出版したのが、サッカー漫画『アオアシ』(小林有吾)を題材にした『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』と『アオアシに学ぶ「答えを教えない」教え方』です。

『アオアシ』に登場する、東京シティ・エスペリオンFCユースチームの福田という監督がいるのですが「答えを教えないタイプの教え上手」という立ち位置のキャラクターになっています。福田監督は、手取り足取り丁寧な教え方は一切しないので、一見すると何をしているかよくわからないどころか何にもしてなさそうにすら見えるかもしれません。
じゃあこの福田監督は具体的に何をしているのか、または何をしていないのかを言語化するために「良いお題を作って渡しているのではないか?」という仮説を立てて、それを「お題設計アプローチ」と呼んでいます。
チームの自律とマネージャーの悩み
仲山さん:こちらは司会の藤田さんとの事前のやり取りで、参加者や世の中のマネージャーの皆さんがどんなことに悩みがありそうなのか、ピックアップしてもらったものです。

これらの課題感を踏まえ本題に入っていきます。
「賢者風リーダーシップ」を諦めることがスタート地点

仲山さん:「答えを教えない教え方」には「お題設計アプローチ」、「1:n:nの実践コミュニティ」、「愚者風リーダーシップ」の3つのキーワードがあります。
藤田さんにピックアップしてもらったお悩みの例は、「愚者風リーダーシップ」と繋がると感じたので、まずはここから解説します。
僕はリーダーシップには「賢者風(けんじゃふう)」と「愚者風(ぐしゃふう)」があると整理しています。この言葉を聞いた印象はいかがですか?
藤田:なんとなく「賢者風」のほうがかっこよくて、聞こえが良いという印象は持ちますよね。
仲山さん:まさに。なのでリーダーは、「全部正解を知っていなければならない」「先頭に立って引っ張っていかなければいけない」と思われがちなんです。でも「正解のない時代」では、それこそリーダーすらも正解がわからないことばっかりですよね。6年前、コロナによるパンデミックで、出社を控えてリモートワークが世界中で実施されました。あの時点で正解をわかっている人なんて誰もいませんでした。それでも、リーダーが全部を決めなければいけないと思っていると、正解のない時代を乗り越えていくのはかなり難しいですよね。
そのような前提に立ち「賢者風リーダーシップを諦める」のが「愚者風リーダーシップ」のスタート地点です。
ただし、愚者風リーダーシップのほうが難易度が高い部分もあり、今までとは違う頭の使い方が求められます。まず「愚者風リーダーシップに本気で挑んでみるか」と思えるかどうかがスタート地点になります。それぞれの特徴を眺めてみて、どう感じますか?

藤田:こう眺めてみて、管理職時代の自分は、いわゆる賢者風アプローチをしていたのかもしれません。一方で愚者風のアプローチはたしかに難しそうだとも感じました。
仲山さん:たとえば、どのあたりの要素に難しさを感じますか?
藤田:「納得するまで対話する」というのも、人によっては気疲れするかもしれないですよね。あるいは、「沈黙が怖い」とかもあるかもしれません。
仲山さん:ありがとうございます。賢者風だと、「良いお題を作って渡す」というアプローチのときに、「お題を出す人が明らかに正解を知っている」と思われやすいので、お題を出された側は、出題者に「正解を聞きにいく」という形になりやすいんですよね。そして、答えを聞きに行き続ける「依存型」の関係を生んでしまいやすいんです。
事前にもらっていた4つ目の悩みにある「計画を上長に求めてしまう」みたいな課題って、まさに依存の結果出てきているコメントなんだと思います。
ということで「俺は答えわからないよ」と平然と言えて、学習者側から見ても「本当に答えは無いんだな」と思えるようなリーダーシップのスタイルを取れるかどうかがまずは大事です。

こちらは、以前、「プレイングマネージャー忙しすぎ問題」が講演テーマだったときに作ったスライドです。
横軸の左側は、今いるメンバーではそもそも回っていない状態です。右側は、今いるメンバーでなんとかやれている状態です。縦軸の上は、育成する時間的余裕がある状態。下は、育成する時間的余裕がない状態です。
多くの場合、「自分で巻き取っちゃう問題」は、左下の「今いるメンバーでやれないし、育成する時間的余裕もない」状態で起こります。
ただ、これをずっと続けていると、そのうち潰れてしまいます。本当は右上の状態だったら良いのですが、すぐにこうはならないですよね。
今日は、左上の「今いるメンバーでは少し不十分だけれど、育成する時間的余裕はある」ケースを対象に扱っていきたいと思います。
ある日突然教える側になるがゆえの「教えすぎ問題」「教えなさすぎ問題」
仲山さん:ほとんどの人が、これまで教わる側だったのに、ある日突然教える側になります。
部活に後輩が入ってくるとか、マネージャーに昇格してメンバーを持つことになったタイミングで「教えるとは?」「育成とは?」ということを、しっかり学べている状態で教える側に回る人って、おそらく世の中にほとんどいないと思います。
なんとなくやり始めようとしますが、そうすると今まで自分が教わってきたやり方が原型になります。「教わる」経験としては学校教育が長いため、先生の話を一方的に座って聞かせるようなやり方に自ずとなってしまいます。
または熱量高く教えはじめて、手取り足取り教え込もうとして「何でできないんだ!」と怒ってしまうことで、相手がやる気をなくしてしまったり。あとは、教えたとおりにできるようになったら「次はどうしたら良いですか」と聞かれつづける依存関係を生み出してしまったり。そこで多くの方が「教えすぎ問題」にぶち当たってしまいます。
何か他のやり方はないのかなと本を買って勉強し始めると、「答えを教えてはいけません」とか、あるいは「答えは相手の中にあるのです」と書いてあるものに出会ったりします。そして、仕事を任せて見守るときに、「口を出してはいけない」と思い込みすぎて、今度は逆に、「教えなさすぎ問題」にぶち当たってしまいます。
なので、その中間にあるものとして「良いお題を作る」ことができるようになると良いのではないかと伝えています。
「答えを教える教え方」と「答えを教えない教え方」の違い
「答えを“教える”教え方」と「答えを“教えない”教え方」の違いについて考えてみます。サッカーのキックの仕方の教え方を例にとってみます。

左側の、細かく指示を出すように答えを“教える”教え方を、ここでは「伝統的アプローチ」と呼びます。
一方で、「お題設計アプローチ」は、「ここからゴールを決めてください」と伝えます。そのうえで、「途中に障害物として旗が立っているので、その旗の右側を通る軌道でゴールできるように蹴ってください」とお題を出します。それを本人が試行錯誤していくうちに、成功確率の高い蹴り方が身につき、結果的にカーブキックが蹴れるようになっている。このようなアプローチが、お題設計アプローチです。

この「伝統的アプローチ」と「お題設計アプローチ」をもう少し比較していくと、まず「効果」の違いがあります。
たとえばボールの蹴り方の例では、伝統的アプローチの場合、教わった蹴り方がその人にとっての最適解かというと、必ずしもそうではありません。なぜなら、人はそれぞれ、体格も骨格も違うからです。
一方で、お題設計アプローチの場合は、お題に取り組みながら、試行錯誤を通じて自分にとって最適な蹴り方を自分で探していきます。福田監督の名言の一つ、「自分でつかんだ答えなら、一生忘れない」という言葉のとおりです。
お題の出し方と5つのステップ
仲山さん:ここからは「お題の出し方」に移っていこうと思います。
お題の出し方には次の5つのステップがあります。

今日はあまり時間がないので、主に①・②・③のステップについて紹介します。
①つかみ
1つ目は「つかみ」です。
お題設計アプローチの難しさとして、「お題に取り組むのはめんどくさい」ことがあります。お題を渡しても、ちゃんとやってもらえるかどうかはわかりません。宿題をやるのが、めんどくさい感覚と同様です。
なのでまず、学習者側にやる気がある状態を生み出せるかどうかが、大事な前提になります。そのやる気を引き出すのが「つかみ」です。つかみのポイントとしては、まず「興味関心がある」という状態を作ることです。もう一つは「ギャップ」です。

ギャップとは、右下に書いているとおり「なんでそうなるの?」と脳内にクエスチョンマークが浮かんだ状態です。そうすると、脳はそのギャップを埋めたくなり、興味を持つことにつながっていきます。これがつかみの効果です。
ただ、つかみはそんなに簡単ではありません。
特に、やる気がない人をつかむのは難易度が高いです。なので考え方としては、どちらかというと「そもそも興味関心がある人を集めることができるのであれば、そんなにつかまなくてもお題をやってもらえる」ということになります。
なので僕は、たとえば講座をやるにしても、やる気がある人が集まるようなるべくハードルが高い状態で募集しています。そのうえで、ちゃんと講座が成立するくらいの人数が集まるようにハードルをチューニングするようにしています。

たとえば「うちの会社でもチームビルディングをやりたいんだよね」と相談をいただくことがあります。そのとき、事務局の方はだいたい「全員参加の研修」をイメージしていらっしゃいます。
ただ、やる気のない人が混じっているとやりにくいし、場の温度感もなかなか上がっていきません。こちら側としては、「チームみんなで何かを成し遂げるとはどういうことか」を、体感的に学んでもらえるようにお題を設計して、そのお題に取り組んでもらうプログラムを作っているわけです。そうすると、やる気のない人が混じっているだけで、かなり上手くいきにくくなります。
なので「やる気のある人だけで、挙手制でやりましょう」と伝えています。あとは、無料参加だと温度感の低い人も混じりやすくなります。なので、「いくらでも良いから、有料でやりましょう」と伝えています。
あとは、「すごく手間がかかりますよ」「講座は全5日間ありますよ」と、いろいろやらなければいけないプログラムだということを、あらかじめ予告しておきます。そのハードルを乗り越えてきてくれた人たちとやるほうが、「強いつかみ」を考えるよりは効果的だと感じます。
実際のつかみのハウツーは、今日は割愛します。
②型の提示
2つ目の、「型の提示」について。
型というとみんなイメージするのが「たい焼きの型」です。同じものを大量生産するための複製の型をイメージしがちだと思いますが、そもそも型には2種類あると考えています。もう一個の型は「生成の型」です。武道の型とも書いてありますが、「このポイントや基準さえ満たしていれば、アウトプットの仕上がりは一人ひとり個性があって良いよ」という考え方が生成の型です。
お題設計アプローチで型というときは、この「生成の型」のことを指しています。

③お題の提示
3つ目が「お題の提示」です。

課題としての「タスク」があって、その中に「制約条件」があり、さらにその中に「型」があります。この型とは先ほどの「生成の型」です。
次に、「制約条件」とは何か?
学習者側の習熟度があまり高くない状態のときは、お題の自由度が高すぎると、選択肢が多くて、どうして良いかわからずに迷ってしまうことがあります。多すぎる選択肢を適切に絞り込んであげるような設計ができていると、学習者側の成長が促されやすくなり、ここで「制約条件」が活きてきます。
もう少し深掘りすると、「型」と「制約条件」には違いがあります。

型とは「この仕事をやるときには外してはいけないポイント」です。
たとえば、会社の理念や行動規範がちゃんと機能していて、日常的に使われている会社の場合、その理念や行動規範は、型と呼べると思います。ベテランは理念を守らなくて良いとか、新人だからこの行動規範はまだ早いのでやらなくて良い、ということにはなりません。「うちの会社で働くときは、全員ここは押さえてください」というものが型です。
一方で、制約条件とは「学習者のレベルに合わせてチューニングするもの」です。
お題を渡した相手、仕事を任せた相手が、動きやすそうかどうかを観察します。そのうえで、なんだか少しやりにくそうだなと思ったら、やりやすくなるように制約条件をチューニングして変えてあげると、スムーズに進み始めることがあります。このように、個別にチューニングするものが、制約条件です。
「答えを教えない」と言うと「何も言ってはいけない」と捉えられがちです。でも、生成の型をちゃんと教えることが、答えを教えない教え方の本質になります。
「つかみ」と「お題」の出し方のケーススタディ
つかみお題の例:鎧をマニア以外の人に売るには?
仲山さん:ここまで、少し抽象的な話で進んできました。なので、なんとなくわかったような、でもわかっていないような感覚になっているのではないかと思います。
藤田さんは今、鎧に興味ありますか? 「めっちゃ鎧買いたい」とか。
藤田:素直に答えて良いところですよね? ないです(笑)。
仲山さん:そうだと思います(笑)。きっと多くの人が鎧には興味ないですよね、という前提で、ここで問題を出します。
皆さんに、この商品をマニア以外の人に売る方法を考えてほしいんです。

マニア以外の人なので、甲冑マニアとか、武田信玄マニアとか、歴史マニア以外に、この商品を売る方法を考えてほしいです。
パッと思いつきますか? 思いついたことをチャットに書いていただけると嬉しいです。
……「バラして部分売り」、「値段を下げる」、「鑑定書を付ける」、なるほど。
「転売したら200万になりますよ」、ちょっと怪しい感じになってきましたね。
「海外スターが着用した形に」、大谷翔平選手に着てもらう、みたいな答えはよくありますね。
「価格が上昇トレンドにあると適当なことを言う」、適当に言うとJAROに怒られます(笑)。
皆さんありがとうございます。ちなみに、本当にこの商品を売っているお店があり、そのお店のページに載っていたのがこちらです。

慎一朗くんの初節句に購入されたんですね。お客様の声として届いたものが載っていました。
ちなみにこのページはすごく長くて、この下に、5月5日の節句に、子どもと一緒に鎧が写っている写真が、50件くらい並んでいるページなんです。
ということでポイントとしては、「答えやヒントは、お客さんの声のなかに転がっている」という視点があります。
具体的なお題の例:BASの型で商品ページをつくる
鎧のつかみお題で、答えは「お客さんの声」のなかにあることをつかんでいただきました。
一歩踏み込んで「売れる営業と売れない営業」とか「売れるページと売れないページ」という視点で考えてみます。

商品に関する情報は3種類あります、という考え方があります。
「Spec(スペック)」「Advantage(アドバンテージ)」「Benefit(ベネフィット)」と書いてあります。
スペックは、文字どおりスペックで、形状や仕様です。アドバンテージは、他の同種同類の商品と比べたときに、優れたスペックがあることです。「他の鎧よりも丈夫ですよ」とか「他の鎧より軽量です」など。ベネフィットは、お客さんにとっての利益という意味です。
売れない人が何をしているかというと、一生懸命上の2つ、特にアドバンテージを説明しようとしがちです。だけど、興味がない人にとっては、「おまけを付けます」とか「9割引きにします」と言われたところで、いらないものはいらないんです。
一方で、売れる人はベネフィットを伝えています。僕はベネフィットのことを、「商品の先にあるハッピー」と表現するようにしています。
構成の順番としては、先にベネフィットを伝えます。そのうえで、興味を持った人にアドバンテージを伝える。
興味を持つ前にアドバンテージを伝えると失注しやすいんですけど、ベネフィットに興味を持った人がアドバンテージを聞くと、「ああ、そんなに優れているから、このベネフィットが味わいやすくなるわけね」と受け取ってもらいやすくなります。そして最後にスペックを確認して、ポチッと購入してもらう。
この構成が重要で、つまりは「型」になります。これらを踏まえて、いよいよ本題です。

ここに書いてある「ベネフィットとして『お客さまの声』を3つ以上、載せること」が制約条件にあたります。
もし、このお題に取り組む人がベテランで、「ベネフィットって、お客さまの声のなかにいっぱい転がっているよね」ということを知っている人であれば、この制約条件は不要です。
でも、まだそこに気づいていない人がいたとしたら、この制約条件を伝えることで、「どんなお客さまの声が届いていたっけ?」と、お客さまの声を探りに行くという「望ましい行動」が引き出されやすくなります。
お題設計アプローチのよくあるつまずきと対策
仲山さん:アオアシ本を出したあとに、オンラインで1回2時間、全4回の「お題設計アプローチ」実践講座を開催しました。
ただ、全4回が終わった時点で、参加してくれた30人以上の人たちから、「言っていることはわかるけれど、お題を作るのが全然上手くできません」という声が上がりました。
それを1期と2期とやってみました。2期目には、1期目に参加した人がリピートで参加してくれたりもしました。2回やってみると、「だいぶわかってきた」というリアクションが出てきました。
出題者が「型を言語化できていない」問題
仲山さん:その中で見えてきたこととして、お題が上手く作れない理由の典型があります。それは、そもそも自分が大事だと思っている「型を言語化できていない」問題です。
そうすると、結局お題を作っても、「型なしのお題」になってしまうんです。ふわっとした型っぽいものはあるけれど、そのポイントは別に押さえても押さえなくてもどちらでも良い、と本人、つまり出題者が思ってしまっています。
なのでまずは、自分が仕事において大事にしている型を言語化し、形式知化していくことが第一歩として大事です。
出題者が「制約条件を設定できない」問題
仲山さん:「制約条件をどう設定したら良いかわかりません」という声も結構出てきます。
そもそも制約条件とは、相手を観察しながらレベルに合わせてチューニングしていくものです。なので、相手を観察してレベルを設定せずに「制約条件は何にしようかな」と考えても、思いつきません。
場数も大事です。基本的には、一つのお題をいろいろな人にやってもらい、「こういうタイプの人には、このくらいの制約条件にしたほうがやりやすいんだな」と、自分の経験値として溜めていくことが大切です。
出題者が「待てない」問題
出題者が「待てない」問題もあります。「育つのを待てない。つい口出ししたくなってしまう」ということも、よく言われます。その原因は、お題をちゃんと作れていないからです。
「制約条件をちゃんとデザインできている」と思えているときって、「このお題をやるためには、このくらいの期間は試行錯誤する時間として必要だろうな」と考えられているはずです。
そうすると、その期間の間は、別にヤキモキする必要はありません。当然のように試行錯誤していて、思いどおりに進んでいないように見えていたとしても、「良い感じに進んでいるな」と思っていれば良いだけです。
やる気がない人と向き合うための「焚き火の法則」
仲山さん:最後に「やる気がない人とどう向き合うか?」について話をして終わろうと思います。
焚き火をするときに、湿った薪を投入することはあまりないと思います。
でも放ったらかしていたら、その薪はずっと使えません。だから、焚き火が燃え始めたら、湿った薪を近くに置いて乾かす。そして、乾いたら投入できるようになります。
僕は、人間も同じ考え方で良いんじゃないかなと思っています。チームで何かを始めるときに、「やる気のない人を何とかしよう」という対策にフォーカスしすぎる必要はありません。そこにフォーカスしすぎた結果、全体が一歩も進まない、みたいな状態に陥っているチームはたくさんあります。
なのでまずは、やる気のある人、すでに火がついている人を集めて、そこでまず焚き火を起こします。
そこから「乾かす」とはどういうことかというと、「熱が届くようにする」ことです。盛り上がっている活動をクローズドでやっていても、その熱量は伝わっていきません。だから、活動の内容をちゃんと発信するというコミュニケーションを設計しておくことが大事だと思っています。そうすると、それが届いた人たちのなかから、だんだんと“乾いた”人が出てきます。
そして、「なんか面白そうなので入れてください」と言って、人が寄ってくるということが起こります。そうしたら、「じゃあ一緒にやろう」と言って、やり始める。この順番のほうが、結果的には上手くいきやすいなと思っています。これを、僕は「焚き火の法則」と呼んでいます。
本日お伝えしたかった内容は以上です、ご清聴ありがとうございました。
藤田:仲山さん、ありがとうございました!
今回のおさらい
- 「自分で考えて動く」とはどういうことかを説明せずに「自分で考えろ」と言うだけでは、自律型人材は育たない
- リーダーシップには「賢者風」と「愚者風」があり、正解のない時代には「賢者風リーダーシップを諦める」ことがスタート地点になる
- 「答えを教えない教え方」の核心は「良いお題を作って渡す」お題設計アプローチであり、「何も言ってはいけない」ということではない
- お題は「型(生成の型)」と「制約条件」で構成され、型は全員が守るべきポイント、制約条件は学習者のレベルに合わせてチューニングするもの
- お題設計アプローチには「つかみ→型の提示→お題の提示→観察→フィードバック」の5ステップがあり、やる気を引き出す「つかみ」が重要な前提となる
- 一定の参加ハードルを設けることで、やる気のある人だけを集めるのも効果的
- お題が上手く作れない主な原因は、出題者自身が「型を言語化できていない」こと。まず自分の仕事の型を形式知化することが第一歩
- やる気のない人に無理にフォーカスするより、やる気のある人から「焚き火」を起こし、活動を発信して熱を届けることで、自然と参加者が増えていく(焚き火の法則)

