
100のツボ 図解シリーズ著者に学ぶ ジレンマを乗り越え 個と組織がともに勝つために人事ができること|ウェビナーレポート
登壇者:坪谷 邦生
20年以上、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、書籍、人事塾などによって、企業の人事を支援している。 主な著作『図解 人材マネジメント入門』(2020)、『図解 組織開発入門』(2022)、『図解 目標管理入門』(2023)、『図解 労務入門』(2024)、『図解 採用入門』(2025)、『図解 イノベーション入門』(2026予定)など。
略歴:1999年、立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。2001年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルートマネジメントソリューションズ社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、アカツキ社の「成長とつながり」を担う人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志をカタチにする」ことを目的として壺中天を設立し現在。
INDEX
2026年2月16日、シリーズ累計出版部数10万部を超える「理論と実践100のツボ」著者でおなじみの坪谷邦生さんをお招きし、「ジレンマを乗り越え 個と組織がともに勝つために人事ができること」というテーマでウェビナーを開催しました。
本記事では、そのウェビナー内容を全文書き起こしでお届けします。
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坪谷さん:私は元エンジニアで、25歳の時に疲弊した現場の状況に問題意識を持って人事に転身をしました。その時、人事についての基礎知識を学ぼうとしたのですが、その領域の広さと複雑さに驚き、混乱をしました。当時の私のような「学びたいけれど、どうしたらいいかわからない」という方に向けて、執筆や講演をしています。
主な著作としては、『図解 人材マネジメント入門』『図解 組織開発入門』『図解 目標管理入門』『図解 労務入門』『図解 採用入門』の5冊の本をこれまで出してきました。
私は“研究者”ではなく“実践者”です。人事担当者、人事マネージャーとして10年間経験してきました。そして人事コンサルタント、人事顧問、人事アドバイザーとして10年間、50社以上の人事制度を構築し、組織開発の支援をしてまいりました。丸25年間実践してきた、実際に使える人事の知識をお届けしたいなと思います。
「人事」とは何か?
先ほどから「人事、人事」と触れておりますが、人事とはそもそも何でしょうか? 人事って何だと思いますか? 皆さんの考える「人事」をチャットに書いてみてください。何でも大丈夫です。
(チャットでのコメント)
- 事業目標や中計達成のために人にまつわる分野から成果をあげる部署
- 組織と社員を成長&幸せにする仕事
- 会社の成長や発展を人を活用して達成する集団。社員のことを最も考えている組織
- 会社と従業員のサポーター
色々な見方がありますね、どれも素敵な捉え方だと思います。
私はこう考えています。
人事とは、人を生かして事を成すこと。

人を犠牲にして事を成すのは人事ではありません。それは搾取です。
逆に、人は元気なんだけど成果が出ていない。これは「ぬるま湯」です。
「人」と「事」の両方を同時に実現することが「人事」だと私は考えています。
多くの組織を支援するなかでわかったことがあります。うまくいっている会社とうまくいっていない会社の大きな差分はどこにあるのか? それは目標管理です。
目標管理が機能している会社は、会社自体もうまくいっているが、目標管理に失敗している会社はうまくいっていない。「人」と「事」を同時に実現するための肝は、目標管理だと考えるようになりました。
「目標管理(MBO)」とは何か?
「目標管理」とは一体何でしょうか? 皆さんの考える「目標管理」をチャットに書いてみてください。
(チャットでのコメント)
- 個と組織における理想と現実の差分を埋めるための施策と結果、その評価方法
- 会社が達成したい目標の責任範囲を個人まで細分化したもの
- 会社方針に沿った今期にやりたいこと
- 会社の発展(目指したい方向性)と社員の成長・自己実現をすり合わせ、上司としてサポートすること
私はこう考えています。
共通の目標と自律的な貢献によって組織を使って成果をあげること。
目標管理は、ピーター・ドラッカーが『現代の経営』という本で初めて出した概念で、原文では「Management by Objectives and Self-Control」と表現されています。

- Management: 組織を使って成果を上げること
- By Objectives: 共通の目標によって
- And Self-Control: 自律的な貢献によって
過去の事実を評価して処遇を決定し、納得を目指す「人事評価」と、現在と未来の成果を最大化し、エネルギーの増幅を目指す「目標管理」を混ぜないほうがいい、とドラッカーは言っています。

「組織」と「成果」とは何か?
組織とは?
続いて、組織とは何でしょうか? チャットに書いてみてください。
(チャットでのコメント)
- 少なくとも「集団」とは違う印象がある
- 同じ目標をもって2人以上集まったらそれは「組織」と上司に言われた
- 同じ目的に沿って、協働する集まり
私はこう考えています。

組織は「組んで、織りなす」と書きます。
- 組む: 共通の目的を目指して肩を組んでいるイメージ。
- 織りなす: 協働。1人でやるより効果が上がること。
ただ集まっただけでは「集団(グループ)」です。共通の目的を持ち、役割分担をして1人でやるより高い成果を目指すのが「組織」です。
成果とは?
マネジメントとは「組織を使って成果をあげる」と表現しましたが、「成果」とは何でしょうか? こちらもチャットに書いてみてください。
(チャットでのコメント)
- 目的に対して生まれた価値
- 良い変化
- ポジティブなイメージがある
私はこう考えています。

成果とは、顧客・社会に価値が届くこと。
成果は組織の中には存在しないとドラッカーは言っています。
売上や利益そのものではなく、強みを発揮して組織へ貢献し、それが社会への価値になった時に初めて成果と呼びます。上司の仕事は、そのための「支援(アシスト)」です。
目標管理の実態調査
あなたの所属する組織の目標管理はうまくいっていますか? チャットに書いてみてください。
(チャットでのコメント)
- 数字偏重になりがちでうまくいっていない
- 全社としては平均的にうまくいっていたが、マネージャーの手腕に左右されがちでもあった
- 会社からの期待とメンバーのやりたいことを接続させるのが難しい
- Will/Can/Mustがズレたり、そもそも上司が把握していなかったりする
あまりうまくいっていない方が多いみたいですね。
こちらは同じ質問を、1,000人近くの方に「目標管理は上手くいっていますか?」と調査した結果です。

- 上手くいっている: 24%
- 上手くいっていない: 27%
- どちらとも言えない: 41%
という結果になりました。うまくいっていると回答した人からは「業績が良い」「効率が良い」「進捗が管理されている」などのコメントがありました。逆にうまくいっていないと回答した人からは「評価が曖昧」「形骸化している」「目標設定が難しい」などのコメントがありました。
もう少し深掘りしてみます。
目標管理がうまくいっていない理由
こちらは、目標管理がうまくいっていないと回答した人たちがあげた理由です。

面白いのは「成果」や「支援」の話を誰もしていなかったことですね。多かったのは「評価/報酬」の話、それと「上司への不信感」をあげている人も多かったです。
形骸化した仕組みと不明瞭な状況の中、上司と評価に不信感をもち、表面的な低い目標を掲げているというのが、目標管理がうまくいかない人たちの声ですね。
高い目標を立てて失敗すると評価が下がって損するという恐れから、「表面的な低い目標を掲げてごまかそう」という悪いサイクルが起きているということです。
目標管理がうまくいっている理由
逆に目標管理がうまくいっていると回答した人たちは、このようなコメントをしています。

見える化された環境と上司の適切な支援のもと、目標に集中している。集中がキーワードです。
先ほどの、うまくいっていない人たちは、「成果」に目が向いていないんです。上司や評価に目が向いている。逆にうまくいっている人は、「評価/報酬」についての声がほとんどありません。成果、仕事、目標などの話が多いです。上司そのものの話より、「支援」の話をされている方が多いです。
ここから言える「うまくいくかいかないかの明確なギャップ」は、「見える化」ですよね。何が起きているかがわかるようになっている。また、「組織の内側」にフォーカスしている人たちはうまくいっていないですね。先ほど触れたように、ドラッカーも「成果は組織の中には存在しない」と言っているのと通じます。
目指すべき理想の状態
目標管理(MBO)で目指すべきは、どんな状態だと思いますか? 皆さんは、あまりうまくいっていないとコメントされていましたが、どうなったら理想でしょうか? 重い問いですが、ぜひ考えてチャットに書いてみてください。
(チャットでのコメント)
- 支援される側の働きがい・やる気・満足度の向上
- 会社の期待と本人のやりたいが接続されている。達成してももっとやりたいと思える
- 目標管理があることで、ない状態より成果が拡大する(と感じられている)
- Mustを超えるWillを達成すること
私はこう考えています。
「個と組織がともに勝つ」という状態です。

個人がやりたいと思って、キャリアとしてもうまくいって、成長したいと思える。会社としても、成果があがる、顧客も喜ぶ、世の中に貢献できる。このような握手が生まれることが大事だと思います。

組織が必要としているものは、個の強みと責任を全開し、全員のビジョンと活動を共通の目的に向けて方向づけ、チームワークを実現し、個の目標と共同の利益を調和させるマネジメントの原則である、とドラッカーは言っています。
少しややこしいので、私なりに整理するとこのようになります。
個・組織 × 主観・客観の4象限を目標設定によって統合し、スパイラルアップする。

個と組織、主観と客観の4象限に分けられます。
- 個の主観:夢
- 個の客観:強み
- 組織の主観:使命
- 組織の客観:業績
この4象限のど真ん中に目標設定を置き、統合(方向づけ)することで、スパイラルアップさせる(全開させる)。これがぐるぐる回りながら個と組織がお互いを高め合っていくというのが、理想の目標管理だと私は定義しました。
概念的だとわかりづらいため、目標設定ワークシート「MOK4」をつくりました。シートの左側に皆さんの夢や強み、会社の業績・使命を書いて、具体的にどんな目標を置くかというのをシートの右側に書いていくと、いい目標設定ができて目標管理をドライブできる、というワークシートです。無料でダウンロードできるので、ぜひやってみてください。

知識やワークシートだけだとなかなかピンとこないことも多いと思います。
先ほど、「マネージャーに左右される」というコメントもありましたが、私もそう思います。いろんな企業の経営者に「目標管理どうですか?」と聞いてみても、皆さんだいたい「バラついているよ」とおっしゃっています。どういうことかと聞くと、良いマネージャーだとうまくいっているし、そうじゃないとうまくいっていない。結局、目標管理には「上司ガチャ」な性質もあります。
本を読んだり知識に触れたりしてもなかなか身につきづらく、「いい体験、いい経験」をしていないと目標管理は身につかないんじゃないかという考えに辿り着きました。
マネジメントの哲学を唱えたドラッカーも、上司のもとで2年間みっちり鍛えてもらって身についたと言っています。でも、良い上司に巡り合うことは稀です。
そこで私たちはゲームラーニング形式で学べるボードゲームを作りました。ボードゲームを通じて、目標管理にまつわる体験を擬似的に味わうことができます。「真の目標管理、良い目標管理ってこういう感じか」と味わうことができるんです。体験会を無料で開催していますので、興味を持っていただいた方はぜひご参加ください。
(参考)目標管理ボードゲーム体験会
私からお伝えしたいことのラストは、人事は「人を生かして事をなすこと」です。

マネジメントをやっていると、相手を生かすことや世の中にフォーカスしがちで、自己犠牲をしてしまうことも多いですが、人の中には「あなた」が含まれています。
まずはあなたが自分自身を生かすところから、人を生かして事をなす人事を始めてください。
チェックアウト
最後に、本日のチェックアウトをしましょう。今日の感想やコメントをチャットに書き込んでみてください。
(チャットでのコメント)
- 「目標管理」より手段としての「人事評価」という言葉のほうが先にきてしまうことが多いこれまでの社会人人生だったなと気づきました
- 参加型でとても有意義でした!他の皆様のご意見も学びになりました。
- 目標管理のスパイラルアップの四章限はなるほどと思いました。一方でこれを実践して、現場に定着するのには時間がかかりそうだなとも感じました。
- 「目標」と「目的」の定義をどのように使い分けされているか聞いてみたいです!
感想だけでなく質問もありがとうございます。
「目標」と「目的」の違いについて、目標と比べて目的のほうが大きくて抽象度が高いです。RPG(ロールプレイングゲーム)で例えると、ラスボスを倒すのはあくまで目標。世界を平和にするのが目的です。
子供たちに青空を残すのが目的なら、CO2を何%削減するかが目標。目標のほうが具体的です。目的がよくわからないと目標が数字で独り歩きしてしまいます。
そろそろお時間が近づいているようなので、締めたいと思います。本日はご清聴、ありがとうございました!
編集部よりご案内
2026年4月17日、坪谷さんが代表を務めるる株式会社壺中天と株式会社mentoによる共催で「目標管理ボードゲーム体験会」を開催します。
シリーズ累計出版部数10万部を超える「理論と実践100のツボ」著者でおなじみの坪谷さん氏は、25年間人事に関わってきた中で、「個と組織がともに勝つための肝は、目標管理(MBO)にある」と語っています。しかし、「いいマネジメント」「いい目標管理」はマネージャーの手腕に左右されがちで、「上司ガチャ」の側面もあります。また、講義形式の研修や知識だけでは本質は身につきづらく、必ずしも実践につながるわけではありません。
そこで必要になるのが「いい体験」です。
壺中天では、誰もが楽しく体験できるゲームラーニング形式のボードゲームを開発しています。
個と組織がともに勝つ。その鍵を探している方に、ぜひとも目標管理ボードゲームからパラダイムが変わることを体験していただきたいです。
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