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「リーダーシップ開発を、問い直す。」開催レポート【Management Success Hub】
「リーダーシップ開発を、問い直す。」開催レポート【Management Success Hub】

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マネジメントサクセスプラットフォーム「mento」を提供する株式会社mento(本社:東京都港区、代表取締役:木村憲仁、以下mento)は、2026年9月8日(水)に「Management Success Hub リーダーシップ開発を、問い直す。」を開催いたしました。その内容をハイライトとしてお届けします。

開催背景

「リーダー研修をしているが、現場でリーダーシップが発揮されていない」
「成果も人も、と言いながら、結局どちらかを諦めさせてしまっている」

研修を実施しても現場が変わらない、1on1を導入しても形骸化する、リーダーが育たない。その原因は、管理職個人の能力や意識の問題ではなく、組織が管理職に「解消できない矛盾」を押し付け続けている構造にあるかもしれません。

本イベントでは、京都大学経営管理大学院の関口倫紀教授、神戸大学大学院経営学研究科の鈴木竜太教授が登壇。そして、関西圏の大手企業で人事・組織開発、管理職育成を担う皆様にお集まりいただきました。

経営学の第一線で研究を続ける両教授とともに、リーダーシップ開発のあり方を問い直し、参加者間での率直な課題共有と、新たな発見が生まれる場となりました。

イベント内容

【講演1】関口 倫紀 教授(京都大学経営管理大学院)
「なぜ、育成上の矛盾はいつまでも解消されないのか - パラドキシカル・リーダーシップを組織の共通言語にするための条件」

矛盾は「選ぶ」のではなく「両立させる」

変化の激しい時代、経営やマネジメントは常に対立や矛盾と向き合います。

「既存事業を守りながら新規事業をつくる。短期利益を追いながら長期投資を続ける。」

こうした対をなす要素は、どちらか片方を選べば済むものではありません。関口教授は、これらをトレードオフやジレンマではなく、相互に依存し合い、解消されずに存在し続ける「パラドックス」として捉え直すことの重要性を説きました。

鍵となるのが両立思考に基づく「パラドキシカル・リーダーシップ」です。矛盾を認識し、肯定し、その緊張(テンション)をパフォーマンスの味方につけながら、どちらも妥協せずに追求していく姿勢が求められます。

パラドックスを乗りこなす「ABCDシステム」

パラドックス・マネジメントのフレームワークとして、関口教授は「ABCDシステム」を紹介しました。

  • A(アサンプション)
    矛盾を自然なもの・チャンスとして捉え直す前提の転換
  • B(バウンダリー)
    高次のパーパスにリンクさせ、行き過ぎを防ぐガードレールを設ける
  • C(コンフォート)
    矛盾に伴うネガティブな感情も受け入れ、ユーモアを交えて向き合う
  • D(ダイナミクス)
    固定的な状態ではなく、動きながらバランスをとる『動的平衡』を実践する

リーダー自身が体現する「相反する行動」

さらに関口教授は、リーダー自身がパラドキシカルに振る舞うことの大切さにも触れました。「自分が中心になりつつ、メンバーを主役にする」「距離を置きつつ、親しく付き合う」「厳しく要求しながら、柔軟性を許容する」。

こうした相反する行動を動的に両立させることが、変化の時代に組織を持続的に発展させる、というメッセージが共有されました。

【講演2】 鈴木 竜太 教授(神戸大学大学院経営学研究科)
「リーダーシップ開発を問い直す - 管理職だけを鍛えても、組織は変わらない。」

そもそもリーダーシップとは何か? 「成果」から逆算することが肝要

鈴木教授はまず、リーダーシップの定義を「集団に目標達成を促すよう影響を与えるプロセス」と整理しました。ポイントは、リーダーシップがリーダーとフォロワーの間で生まれる相互作用であること、そして両者に『共有された目標』が不可欠であることです。目標が共有されず、自分のためだけに人を動かすのは、リーダーシップではなく単なるパワー(権力)に過ぎません。

不確実性の高い時代に成果へつなげるには、まず「どんな行動をフォロワーにとってもらう必要があるか」を考え、成果から逆算して「リーダーとしてどう振る舞い、声をかけるか」を設計する。この順序が、業績をもたらすリーダーシップの起点になると語りました。

リーダーシップ開発とは、管理職個人だけを鍛えることではない

リーダーシップの強さは、リーダー個人の特性・能力だけでなく、リーダーとフォロワーの信頼関係、フォロワー側の受け止める力、そして置かれた状況の4つから生まれます。だからこそ、育成の射程を管理職個人の能力向上にとどめず、関係性の醸成やフォロワーの力を高めることまで含めて設計する必要がある。これが講演タイトルに込められた核心です。

職場に「関わりあい」を取り戻す

鈴木教授が重視したのが「関わりあい」です。これは仲の良さではなく、「自分の仕事と他者の仕事が互いに影響し合う」という相互依存性への認識を指します。

しかし近年は個別の業績管理が進み、仕事が“カプセル化”して関わりあいが薄れがちです。個別最適と、職場の仕事構造の変革・集団的評価・協力の文化醸成。この両方に取り組みつつ進めるパラドキシカルなアプローチこそ、職場でのリーダーシップ開発につながると締めくくりました。

ゼミ形式ディスカッション&質疑応答

「モヤモヤ」が対話のスタート地点

後半は、参加者同士のグループディスカッションと、両教授への質疑応答へ。

あるグループからは「パラドキシカル・リーダーシップという言葉を誰も知らないところから議論が始まり、経営層と現場で見えている景色が異なるという自社のパラドックスについて語り合ったが、結局『やっぱり難しい』とモヤモヤしたまま終わった」という率直な共有がありました。

これに対し両教授は、「そのモヤモヤ自体に本質がある」だと述べます。

関口教授は「パラドックス思考に明確な正解はなく、モヤモヤ感を維持しながら動的平衡を保って前に進むことこそ重要」と述べ、鈴木教授も「ひとつの行動で全てを解決しようとせず、複数のシリンダーを回しながらバランスを取る。試して、ダメならやめ、うまくいきそうなら深掘りする。このような実験的な姿勢が大切」と補足しました。

質疑応答

Q. AI時代に、人間の組織にしか作れない価値とは?

関口教授は「AI自体も大きなパラドックスを抱えている」とし、生産性を高めつつ、働く人が学習し続けられる環境をどう設計できるかが問われると回答。

鈴木教授は「リーダーの本質は問題解決ではなく“良い問いを立てる”こと。組織のパーパスを、自分たちの職場に合った“ワクワクする問い”へ翻訳する仕事は、AIにはできない」と答えました。

Q. 選抜研修に選ばれた社員ほど、現場に戻ると離職してしまう。

両教授は、これを個別の教育ではなく構造的なパラドックスと捉えます。

人材を優秀に育てるほど市場価値が上がり離職リスクも高まる。だからこそ「優れた人材を育てること」と「その人材が活躍したいと思える受け皿、現場マネジメントのあり方を用意すること」をセットで設計すべきだと語りました。

Q. 個人のスキル向上だけでは、対話が自然に生まれる職場にならない。

鈴木教授は、対話が「論破」や「勝ち負けを決めるディベート」になっては本質的な対話は生まれないと指摘。上司だけでなく職場全員が「対話とは、互いの前提の違いを了解し、新しい意味を共に作る作業だ」というスタンスを共有することが、対話を生む職場設計の根幹になると述べました。

両教授からのクロージングメッセージ

「明日からの職場で、ぜひ『これってパラドックスじゃないですか?』と問いかけてみてください(関口教授)」

「不確実な時代だからこそ、安易な正解に飛びつかず、自らの頭でじっくり考え抜く時間を大切にしてほしい(鈴木教授)」

参加者の声(一部抜粋)

  • 両教授が図で示して戴いたものが、これまでの経験と合致していて、整理され、腹落ちしました。
  • 新しいことを学ぶだけに留まらず、実践的な部分の疑問も解消できました。
  • すぐに実践したい、意識したことばかりで、ありがたかったです。
  • リーダーシップの概念の理解を深める中で、組織開発との類似性やフォロワーシップの位置関係を正しく理解することができ、今後の施策に活かすことができそうです。

登壇者プロフィール

関口 倫紀(せきぐち ともき)教授

京都大学経営管理大学院 教授。経済学研究科教授を兼任。専門は組織行動論、人的資源管理論。欧州アジア経営学会会長、日本ビジネス研究学会会長などを務める。産学連携による女性リーダー育成プログラムやパラドキシカル・リーダーシップの共同研究にも取り組む。

鈴木 竜太(すずき りゅうた)教授

神戸大学大学院経営学研究科 経営学専攻 教授。専門は経営組織論、組織行動論、経営管理論。職場における個人と組織の関わりあい、キャリアやミドルマネジメント研究を数多く手がける。

編集後記

「正解のない時代」と言われます。もう少し解像度をあげると、世界自体は存在するがそれは一つとは限らない、つまり「唯一解のない時代」ということなのだと思います。そんな世の中にあって「試行錯誤の過程で、知らずしらずのうちに対立や矛盾が生じることは日常茶飯時。しかも、相互に依存するパラドックスであることも少なくありません。このようなシーンで「パラドキシカル・リーダーシップ」が求められますが、リーダー一人で乗りこなすのは難しい。

でも、一人で乗りこなす必要はなかったんです。「リーダーとは何か」「リーダーシップとは何か」から捉えると、皆で乗りこなすヒントが、よりハッキリ見えてくる。自分自身、リーダーシップ開発を「リーダーの育成」と混同しており、リーダーだけが背負うものと捉えてしまっていました。しかし、フォロワーやその関係性にも着目することで、「難局を乗りこなすチームとしてのリーダーシップ」と捉え直すことができます。

管理職の方をはじめ、リーダー一人が孤軍奮闘するのではなく、皆で背中を託し合う。そんなチームのためのヒントが詰まった一日でした。(藤田)

今後のイベントのご案内

mentoでは、経営学の知見と現場実践をつなぐ場として「Management Success」シリーズを継続開催しています。来たる11月5日に「Management Success Summit 2026」を開催予定です。豪華な登壇者を迎え、さまざまなテーマでのセッションをお届けします。奮ってご参加ください。

https://www.mento.jp/mss/2026

(企画・司会:北垣 優衣、撮影:中野 広夢、文・編集:藤田 隼)

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