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新任管理職や女性管理職の立ち上がりを、管理職コーチで支援――TBWA HAKUHODOのDE&I施策
新任管理職や女性管理職の立ち上がりを、管理職コーチで支援――TBWA HAKUHODOのDE&I施策

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日本を代表する広告会社である博報堂と、米国の大手広告会社TBWAワールドワイドのジョイントベンチャーである株式会社TBWA HAKUHODO。「この社会に意味ある変化をつくりだす」をミッションに掲げる同社では、社員一人ひとりが才能を伸ばし、挑戦できる環境を提供する「Talentism」の考えのもと、DE&Iを積極的に推進しています。そして、DE&I施策のひとつとして管理職コーチを導入しています。

今回、同社のDE&Iに対する考え方や、新任管理職向けのコーチング導入の背景や成果などについて、人事局Talentism推進部の二階さんと礒原さんにお話を伺いました。

(※記事内容・役職は2025年3月時点のものです)

社員が才能を伸ばしクリエイティビティを発揮できるよう、DE&Iに注力

まずは、貴社の事業概要をお聞かせください。

礒原さん:

当社は、2006年に博報堂と、オムニコム系列の世界展開する広告会社TBWAワールドワイドのジョイントベンチャーとして誕生しました。国内外にネットワークを持つ総合広告代理店、クリエイティビティカンパニーとして、さまざまなグローバル企業とパートナーシップを築いています。以前は外資系企業の日本マーケットへの展開をお手伝いすることが多かったのですが、最近は日系企業のグローバル展開を支援する機会も増えています。TBWAやオムニコムのグローバルネットワークを活用して、日本ローカルに縛られない発想でブランディングができることが強みです。

人事局 Talentism推進部のミッションを教えてください。

二階さん

当社は、「この社会に意味ある変化をつくりだす」をミッションとして掲げています。意味ある変化というのは、今と同じことの繰り返しの延長線上ではうまれにくいものであり、当然のことだと思っているルールや常識を疑うことが重要です。そのために、私たちは「Disruption®️(創造的破壊)」を大切にしています。そして、そのDisruptionを生み出していくためにも、社員一人ひとりが才能を伸ばし、最大限クリエイティビティを発揮できる環境を整えることが我々人事の人間の重要な仕事です。我々はこれを「Talentism」と呼び、このTalentismを体現する仕組みを作り、社員が快適に働き、ありのままの自分の姿でポテンシャルを発揮してもらうことを目指しています。

「Talentism」の一つとして、DE&Iにも注力されていますね。

二階さん

社員が自分の偏愛やポテンシャルを仕事で発揮できる環境づくりをすることは、新しい挑戦を生み出すことにつながると考えています。しかしいざ挑戦しようというとき、何か深刻な悩みを抱えていたり、チームの雰囲気がギスギスしていたりするなど、「土台」が不安定だったら、うまくジャンプできませんよね。その土台固めという意味で、DE&Iを重視しています。

礒原さん:

具体的なDE&I施策を検討するにあたり、デスクリサーチや社員へのヒアリングを通して、特に女性活躍推進という観点で見たときボトルネックとなるポイントが2つ見えてきました。ひとつは、時間的な観点です。結婚・出産・育児とライフステージが変化するにあたって、どうしても時間の制約があるなかでキャリアと人生を考えなければなりません。そしてもうひとつは、精神的な観点です。たとえば、あるポジションに必要な要件が10ある場合、男性は1つでも当てはまっていたら手を挙げますが、女性は10個すべて当てはまって初めて手を挙げる傾向があります。このような時間面と精神面での制約をサポートする観点で、卵子凍結費用補助制度、アンコンシャスバイアス研修、コーチング、積み立て有給休暇制度、賞与分配制度など、7つの施策を策定しました。

コーチングによって管理職を支え、「健全な衝突」が生まれる環境をつくる

管理職コーチを導入されていますが、その背景にはどのような課題があったのでしょうか。

二階さん

管理職への昇進は、男女ともに大きなプレッシャーを感じ、責任感が強い人ほど不安が増加するタイミングでもあります。その壁が大きすぎて、管理職の打診を辞退する人が出ているという課題もありました。世の中の流れとしても、「管理職の罰ゲーム化」が進んでいると言われています。実際に当社でも、「プレーヤーとして専門性を極めたいから、マネジメントには興味がない」という人も一定数いることは事実です。さらに管理職に昇進する時期は、育児や介護といったライフステージの変化が重なりやすいタイミングでもあります。このように大きな負荷がかかるときに「誰が管理職を支えるのか」は、会社にとって大きなテーマです。

以前ならば「そのプレッシャーに耐えられ、多くを捧げられる人だけが生き残ればいい」という考えが当たり前だったと思います。その考えはそれはそれで良い面もあるとは思います。しかし、その道を突き詰めすぎると、マッチョな思想になりすぎるあまり、人材の持続的な確保や多様性の拡大を実現することが難しくなるのも事実です。そこで議論を重ねたうえで、社外に第三者の相談回路をつくるという観点でコーチングを導入することにしました。

世の中の流れや働き方の価値観も多様化する中でのコーチング導入だったのですね。

二階さん

いわゆるスーパー管理職は、これまで偶発的にしか生まれてこなかったと思っています。しかし、もうそうした“神降臨”を待つのではなく、再現性のあるシステムをつくることが重要です。コーチングをはじめとするDE&Iの施策で、高い確率で管理職として活躍する人材を生み出したいと考えていました。

「社外に相談回路をつくる」ことが必要だと考えた背景を、もう少し詳しくお聞かせください。

礒原さん

新任管理職として大きな不安を感じながらも、評価が関係するため直属の上司に弱みを見せたくないという人は多いです。そこで、管理職の不安や悩みをまるごと受け止める相談窓口が必要だと考えていました。もちろん上司が力になれるのが理想ではありますが、ビジネスの成果や利害関係のない社外のプロと壁打ちをすることで、自分の内面に気付き、自信を持てるようになってほしいと考えました。そしてコーチとの対話のなかで、部下に対してコーチングのような向き合い方も新たに身に付けられるのではないかという期待もありました。

二階さん:

どんなに優秀といわれる人でも、管理職に昇進するタイミングは、これまでと役割が大きく変わるため、パフォーマンスが停滞することが多いです。その時に、本人の努力や直属の上司の力だけでリカバーするのは難しい部分があります。そこで、評価とは無関係の社外のコーチと話すことで、自分を客観的に見つめ直す機会を設けることが必要ではないかと考えました。そうすれば、昇進直後はパフォーマンスが一時的に停滞したとしても、また新たな成長につながるはずです。

管理職コーチを活用することで、新任管理職にどのような変化を期待しましたか?

二階さん

コーチングを活用することは「弱さ」ではありません。むしろ、社外のプロフェッショナルと対話して内省することが、さらなる成長につながると考えてほしいと思いました。
コーチングを導入する際に、「管理職同士のネットワークや、同僚の友人的なコミュニティを作れば良くて、コーチングは不要ではないか?」という意見がありました。私もこの意見に一定レベルで賛成するのですが、それでもコーチングを導入した理由は、「内省」です。友人や同僚と話をして、ガス抜きをすることは必要であり楽しいことですが、「内省」はさほど進まないことが多いと思います。その点コーチングはリフレクションを進める点に優れていると思いますので、新任管理職がより成長していくためのも、ピアサポートだけでなくコーチングが有効であると期待しました。

特に、マネージャー職になると、挑戦の過程で社内の他部門の人やお客様とぶつかる事が必要になるタイミングがあります。ぶつかる時に、感情的な衝突になってしまうと、しこりを残したり、自信を失ったりする事があります。しかし、コーチングがあることによって、「健全な衝突」にしていく事ができると考えています。そして健全な衝突を重ねることでアイデアが昇華されたり、お互いの理解も深まります。そうした環境をつくるために、コーチングが役立つことを期待しています。

mentoを選んでいただいた理由をお聞かせください。

礒原さん

まずは、コーチ陣がビジネスに精通し実績がある方々であることです。そして、合格率10%という厳しい審査基準でコーチを選定していることが魅力だと感じました。

二階さん:

コーチングは役員などエグゼクティブが受けるものだというイメージがありました。しかしそういった良いものなのであれば、それをもっと民主化できないかという想いがありました。それができる会社はアメリカにはたくさんあるものの、日本にはあまりなかったので、mentoは中間管理職にコーチングを提供できる貴重な存在だったと思います。

また、予約周りなどシステムのユーザビリティが悪いと、社員は使わなくなってしまいますから、優れたUXであることもmentoを選んだ理由です。個人でコーチングの先生を見つけていくことも可能だと思うのですが、そうしたところはどうしても手作り感のあるシステムになってしまい、不便を感じることがあると思いました。一方、mentoはプラットフォームが確立しているため、予約を取ったり時間を変更したりも、ストレスなくできると感じました。

コーチングを受けた管理職全員が「満足度が高い」と回答

管理職コーチ導入後の成果を教えてください。

礒原さん:

コーチングを受けた管理職の全員が「満足度が高い」と回答しました。当初は、あまり前向きではなかった社員も、半年間コーチングを受けた後は「終わってしまうのが惜しい」「新たな自分に気付くことができた」というポジティブな姿勢に変化したのです。また、最初から興味を持って臨んだ社員の中には、コーチングからヒントを得て社内メンター制度を起案するなど、新たな動きも生まれています。

具体的なエピソードを教えてください。

礒原さん

部下に対する自身のあり方として「こうあるべき」という思考が強かった女性新任部長が、半年コーチングを受けた後に「『べき』から少し解放された」という話をしてくれました。彼女の精神的な負担が軽くなってよかったですし、彼女が変化することで部下へのリフレクションも良くなっていきます。今後も、そういったケースが出てくることを期待しています。

また、昨年それまでにないチャレンジングな採用をしました。外国籍で日本語に習熟していない女性を部長クラスに登用したのです。その社員が、誰よりもコーチングを活用していました。そして、コーチングの体験が良いものだったので、同時期にスタートした7つのDE&I施策にも高い関心を示してくれています。会社がDE&Iの観点で社員の挑戦を支えていることを知り、より前向きになってくれたことはとても嬉しい成果です。

二階さん:

部長になって1年目は、周囲からネガティブな評価が出るなど、それまでにないストレスがかかりがちです。それにより、大きな軋轢が生じることもありました。しかし、コーチングがすべてではないと思いますが、そうしたトラブルは減ったと感じていますし、それを未然に防ぐことができたのは成果だと思います。

導入後のmentoのサポートはいかがでしたか?

二階さん

コーチングの必要性は理解していたものの、いざ現場に導入したときに本当に受け入れてもらえるのか不安でした。しかしいざ進めてみると、その心配は杞憂に終わりました。それは、例えばですが、mentoの方が事前に説明会を開催してくださり、コーチングに対する理解を深めるプロセスを着実に踏んでくださったからという部分は大きかったと思います。

また、新しい施策を導入したときにはその成果について報告する必要がありますが、報告レポートの作成には大きな工数がかかります。その点、mentoからいただく定量・定性レポートは完成度が高く、役員への報告も効率的にできました。

変化を面白がり、自由に挑戦できるカルチャーを醸成する

今後、管理職コーチをどのように活用していきたいと考えていますか。

二階さん:

企業を船に例えるなら、海軍より海賊でありたいというのが、私たちの考えです。外からの規則で統率されるよりも、自分の中にある信条で自分を律しながら自由に活躍して欲しいという想いで、オフィスにもパイレーツの旗を掲げて挑戦を続けています。そのアイデンティティは、今後もずっと変わりません。しかし、時代に合わせて海賊の戦い方もアップデートしていく必要があります。

リーダー像も、画一的なものから多様な姿に変わっていきます。リーダーは上に立つ人ではなく、みんなの前に立つ人、つまりリーダーシップを発揮できる人なのだと思います。そしてリーダーシップを発揮するための手段のひとつが、コーチングだと思っています。コーチとの対話で自分に自信を持ち、社員同士がお互いを信頼し合える関係性を築くことができれば、健全な衝突から新たなものを生み出せるはずです。そうした変化を面白がりながら、仲間の前に立ち、自由に挑戦する人が増えていく組織にしていきたいですね。

礒原さん:

コーチングを受けた管理職は、その部下にも適切なリフレクションを促すことができるようになります。コーチングを社員全員に提供できなくても、管理職に提供していくことで部下にも良い影響が及び、会社全体が成長していくはずです。そのサイクルをつくるために、今後もコーチングを活用していきたいと思っています。

mentoカスタマーサクセス担当の宮城とともに

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